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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)774号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人飛鳥田一雄、同平井光一の上告趣意は、外国人登録法は憲法一四条及び三六条に違反する旨主張するが、外国人登録法は、本邦に在留する外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資することを目的とする法律であって人種や社会的身分の如何を問わず、わが国に在留する外国人のすべてに対し、管理上必要な手続を定めたものであり、そしてこのような規制は、諸外国においても行われていることであって、何ら人種的にまた社会的身分により差別待遇をする趣旨に出たものではなく同法律が憲法一四条に違反しないことは、外国人登録令(昭和二二年勅令第二〇七号)が憲法一四条に違反しない旨を判示した昭和三〇年一二月一四日大法廷判決(刑集九巻一三号二七五六頁)の趣旨に徴し明白であるから、同一四条違反を主張する論旨は理由がない、またかかる相当の理由があって設けられた刑罰法令に刑を定めるに当り、その罪の種類、態様、程度に従って如何なる種類、範囲の刑を科すべきものとするかは立法機関に委ねられた立法政策の問題であって、憲法適否の問題でないことは、昭和二三年一二月一五日大法廷判決(刑集二巻一三号一七八三頁)の趣旨から十分に窺いうるところであるから、たとえ所論の如く外国人登録法三条一項違反に対し同法一八条一項一号に定められた刑罰が戸籍法違反の制裁に比し著しく妥当を欠くものがあるとしても、それだけの理由で憲法三六条違反の問題を生ずるものでなく、しかも憲法三六条にいう残虐な刑罰とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑を意味するものであることは、昭和二三年六月三〇日大法廷判決(刑集二巻七号七七七頁)の示すところであり、右判例の趣旨によれば外国人登録法一八条一項一号に定める刑罰は残虐な刑罰とはいえないから、憲法三六条違反を主張する論旨もまた理由がない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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